ヒエログリフで数を表記する場合は、1から100万までの10の累乗を表す文字を1個から9個まで必要な個数だけ並べていました。数を表すヒエログリフを点字化する場合は、ひとつの桁を表す複数の文字をひとつの文字とみなし、数符に位数・仮数を表す符号を連ねてその文字の点字とします。
数符は、一般の現代語と同じく、{003-456}です。原則として、ひとつの文字についてひとつずつ数符を置きます。
位数(桁)は下記の符号によって表されます。
桁 | 符号 | 桁 | 符号 |
1 | ●・ ・・ ●・ |
1日 | ●・ ・・ ●● |
10 | ●・ ●・ ●・ |
10日 | ●・ ●・ ●● |
100 | ●● ・・ ●・ |
||
1,000 | ●● ・● ●・ |
ヘカト | ・● ●● ●・ |
1万 | ●・ ・● ●・ |
||
10万 | ●● ●・ ●・ |
||
100万 | ●● ●● ●・ |
仮数(1〜9)は下記の符号によって表されます。
数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 |
第1符号 | ●・ ・・ ・・ |
●・ ●・ ・・ |
●● ・・ ・・ |
●● ・● ・・ |
●・ ・● ・・ |
●● ●・ ・・ |
●● ●● ・・ |
●・ ●● ・・ |
・● ●・ ・・ |
・● ●● ・・ |
第2符号 | ●・ ・・ ・● |
●・ ●・ ・● |
●● ・・ ・● |
●● ・● ・● |
●・ ・● ・● |
●● ●・ ・● |
●● ●● ・● |
●・ ●● ・● |
・● ●・ ・● |
・● ●● ・● |
これらの符号を組み合わせ、下記の表のように文字を表します。
\仮数 \ 位数\ |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | |
●・ ・・ ・・ |
●・ ●・ ・・ |
●● ・・ ・・ |
●● ・● ・・ |
●・ ・● ・・ |
●● ●・ ・・ |
●● ●● ・・ |
●・ ●● ・・ |
・● ●・ ・・ |
||
1 | ●・ ・・ ●・ |
| | | | | | | | |
10 | ●・ ●・ ●・ |
| | | | | | | | |
100 | ●● ・・ ●・ |
| | | | | | | | |
1,000 | ●● ・● ●・ |
| | | | | | | | |
1万 | ●・ ・● ●・ |
| | | | | | | | |
10万 | ●● ●・ ●・ |
| ||||||||
100万 | ●● ●● ●・ |
| ||||||||
1日 | ●・ ・・ ●● |
| | | | | | | | |
10日 | ●・ ●・ ●● |
| | |||||||
ヘカト | ・● ●● ●・ |
| | | | | | | | |
上記の表にない20万〜90万と200万〜900万を表す文字についても、同じ原則によって点字化することができます。
数を表す文字が数以外の意味で用いられる場合でも、数字とみなして数詞として点字化します。数を表す文字の点字に区別符や合字符を用いて、別の文字の点字を生成することもできます。
1を表す文字は、他の文字の後ろに置かれて、その文字が表語的に用いられていることを表すことがあります。そのような場合は、1を表す符号の代わりに略符号として、その文字の符号の直後に(空白を介さずに){020-000}を置くことができます。これは、唯一の後ろに置く区別符です。
方向符を用いる文書の場合は、各桁を表す符号の間に空白を挿入します。方向符を用いない場合は、空白を挿入せずに各符号を連ねます。また、仮数を表す符号を第2符号に変えることによって、直後の数符を省略することもできます。
方向符を用いない場合は、現代語のように十進位取り記数法に基いて点字化することもできます。その場合は、位数を表す符号を用いず、1の桁以外では第2符号、1の桁では第1符号を用いて点字化します(0を表す符号も用います)。
例として、"1024"を表す点字を下記の表で示します。
条件 | 点字 |
方向符を用いる |
・● ●● ●・ ・・ ・● ●・ ●・ ・・ ・● ●・ ●● ・● ・● ・・ ・・ ・● ●・ ●・ ・・ ・● ・・ ・● ●● ●・ ・・ ・・ ●● ●・ ・・ ・・ ●● ●・ ・・ |
方向符を用いない |
・● ●● ●・ ・● ●・ ●・ ・● ●・ ●● ・● ・● ・・ ・● ●・ ●・ ・● ・・ ・● ●● ●・ ・・ ●● ●・ ・・ ●● ●・ ・・ |
数符を省略 |
・● ●● ●・ ●・ ●・ ●・ ●● ・● ・● ・・ ●・ ●・ ・・ ・● ●● ●・ ・● ●・ ・● ●・ ・・ |
十進位取り記数法 |
・● ●・ ・● ●・ ●● ・● ・・ ●● ●・ ・● ●● ・● ・● ・● ・・ |
ヒエログリフ独特の記数法として、「ホルスの目」があります。目の部分の図像によって1/2から1/64までの2の累乗の逆数を表すというものです。ホルスの目は下記の表によって点字化されます。
コード/名称 | グリフ | 意味 | 点字 | コード/名称 | グリフ | 意味 | 点字 |
D11 | | 1/2 |
・● ・・ ●・ ・● ・・ ・・ ●● ●・ ・・ |
D14 | | 1/16 |
・● ・・ ●● ・● ・・ ・● ●● ●・ ・・ |
目頭 | 目尻 | ||||||
D12 | | 1/4 |
・● ・・ ●・ ・● ・・ ●・ ●● ●・ ・・ |
D15 | | 1/32 |
・● ・・ ●・ ・● ・・ ・● ●● ●・ ・・ |
瞳 | 下瞼の斜めの線 | ||||||
D13 | | 1/8 |
・● ・・ ●● ・● ・・ ・・ ●● ●・ ・・ |
D16 | | 1/64 |
・● ・・ ●● ・● ・・ ●・ ●● ●・ ・・ |
上瞼 | 下瞼の垂直の線 |
ホルスの目は組み合わされて、各数の和である数を表しました。そのような図像を点字化する場合、数符と{003-000}の後ろに各符号の3番目の点字の第2符号(最後のみ第1符号)を連ねたものをその文字の点字とします。なお、方向符を用いない場合でも、ホルスの目の点字の数符は省略しません。
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