空白と配列符

 ヒエログリフには、縦長の文字や横長の文字等、さまざまな縦横比の文字が混在しています。現代語の慣習とは異なり、書字方向のみならず、厚みの薄い文字は書字方向とは垂直の方向にも重ねたり、小さい文字ならその層の中でもさらに垂直の方向(つまり書字方向と同じ)に並べたりしていました。
 論理的には、文字の1次元的配列さえわかれば、文として点字化することができます。ただし、方向符を用いる場合は、文字の位置についての情報も重要な考察の対象とみなしますので、下記の配列符を用いて文字の2次元的配列を示します。

第1配列符 第2配列符 第3配列符
・・
・・
・●
・・
・・
●●
・・
●●
●●

 方向符を用いる場合、原則として各文字の符号の間に空白を置きます。ただし、書字方向と垂直な方向に文字が重ねられている場合は、それらの文字の符号の間に第1配列符を置きます。さらに垂直の方向の文字が並べられている場合は、それらの文字の符号の間に第2配列符を置きます。同様の規則によって、第3配列符も置きます。必要ならば、第4配列符は第3配列符をふたつ連ねたものとし、第5配列符以降はさらに第3配列符をひとつずつ連ねていきます。
 下記の表は、横書きで左から書きはじめられている場合のモデルです。

配列 点字
(1) (2) (3) (1) ・・
・・
・・
(2) ・・
・・
・・
(3)
(1) (2) (4) (1) ・・
・・
・・
(2) ・・
・・
・●
(3) ・・
・・
・・
(4)
(3)
(1) (2) (5) (1) ・・
・・
・・
(2) ・・
・・
・●
(3) ・・
・・
・●
(4) ・・
・・
・・
(5)
(3)
(4)
(1) (2) (5) (1) ・・
・・
・・
(2) ・・
・・
・●
(3) ・・
・・
●●
(4) ・・
・・
・・
(5)
(3) (4)
(1) (2) (6) (1) ・・
・・
・・
(2) ・・
・・
・●
(3) ・・
・・
●●
(4) ・・
●●
●●
(5) ・・
・・
・・
(6)
(3) (4)
(5)

 同じ文字が用いられている場合でも、縦書きと横書きとでは配列符の用い方が異なる場合があります。上記の表の最後の例では、縦書きの場合、(2)と(3)〜(5)のグループとの間は書字方向である縦に区切られているので空白を置くことになります。(3)と(4)・(5)のグループとの間には第1配列符を置き、(4)と(5)との間には第2配列符を置きます。
 方向符を用いない場合は、配列符を用いず、ヒエログリフのラテン文字転写の慣習に則って単語ごとに空白を置きます。人称接尾辞や発音されない決定詞等は、前の単語に含めます。ただし、単語の区切りがわからない場合は、全ての文字の符号の間に空白を置いたり、全ての文字の符号を連ねたりすることもできます。
 下記の表は、「太陽が見えます」という意味の文を点字化した例です。開始符・終了符・方向符は省略しています。

ヒエログリフ
発音 iw maa.i r'
方向符を用いる場合 ●・ ・・ ●・ ・・ ・・ ●● ●・ ・・ ●・ ●・ ・・ ●・ ・・ ●・ ・・ ・● ・・ ●・ ・・ ●・ ・・ ●・ ●・
・● ・・ ●・ ・・ ・● ・・ ・・ ・・ ・● ●● ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・● ・・ ●● ・・ ・● ・・ ●● ・●
・・ ・・ ●・ ・・ ・● ●● ・・ ・● ・● ●・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ●・ ・・ ●・ ・● ●・ ・・ ●● ●・
方向符を用いない場合 ●・ ●・ ・・ ・・ ●● ●・ ●・ ●・ ●・ ●・ ・● ・・ ●・ ●・ ●・ ●・
・● ●・ ・・ ・● ・・ ・・ ・● ●● ・・ ・・ ・● ・・ ●● ・● ●● ・●
・・ ●・ ・・ ・● ●● ・・ ・● ●・ ・・ ・・ ●・ ・・ ●・ ●・ ●● ●・

 改行は、原則として空白の位置でされます。配列符を持つ長い点字列の途中で改行する必要が生じた場合は、配列符の後ろで改行します。
 方向符を用いない場合は、改行の前後は基本的に別の単語とみなされますので、単語の途中では原則として改行しません。長い点字列の途中で改行する必要が生じた場合は、合字符を持つ符号の合字符の後ろで、合字符を持つ符号がない場合は区別符を持つ符号の区別符の後ろで改行します。

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